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2020.07.20
間取りの考え方
こんにちは!
エコ―アートの袴田です。
本日は、間取りの考え方についてお伝えします。
その前に…間取りに正解ってあると思いますか?
設計を担当している多くの方にこの質問をすると、恐らく多くの方が「間取りに正解はない」と答えると思います。
私の見解では、間取りに正解があるorないで答えるとすれば、「間取りに正解はない」と答えるのですが…
具体的に答えると「半分正解があって、半分正解はない」が私の答えです‼
ひねくれた回答で申し訳ありません(笑)
では、詳しく解説してきましょう(^0^)
「間取りには、半分正解がある」の意味
間取りを考える上で、まず大前提とされることがあります。
その大前提とされることがクリアできていない場合、私は不正解であると考えます。
では大前提とされることは何か?
それは「耐震性」です‼
意味が分からない方も多いかもしれませんね。
では、「耐震性」はどこで決まるのか?
実は、間取りで「耐震性」が決まると言っても過言ではないくらい、大きな要素を占めています!
ここから、少し「耐震性」の話も加わります!
「耐震性」の高い間取り①
最も耐震性の高い間取りは、平屋です!
今、大人気の平屋…実は一番耐震性に有利なのです。
エコ―アートの「間取りを考慮した平屋」の施工例です。
なぜか??
理由は、建物の階高が低いからです。
高い建物より、低い建物の方が建物の頭部分の揺れ巾が少ないのが主な理由になります!
ただ、平屋は敷地が広くなければ建てられないこと、30坪の総2階と平屋とでは掛かるコストが2~3割ほど平屋の方が高くなってしまうなど…
現実的なデメリットも多く存在します。
平屋をご希望される方は多いのですが、叶う方はあまり多くないと思われます。
余談ですが、大きな建物(ビルや○○タワー)は、階高が高いのでとても緻密な構造計算をしています。
大都市に行った際、大きな建物を見ると、日本の大手建設会社の凄さを毎回、実感します!
「耐震性」の高い間取り②
間取りを考える上で、柱と柱の間隔は3m以内にすることとしています。
理由は簡単。
3m以上、柱と柱の間隔を空けると負荷が大きくなり、力が掛かる場所が集中しやすくなるためです。
間取りを考える時、実は柱の位置も同時進行で考えているのです!
ポイントは、広いリビング。
間取りを考える際の多くの方のご要望に、広いリビングや20畳のリビングダイニングなどとよくあります!
広いリビングや20畳のリビングダイニングが大空間になっている写真をよく見かけてしまいます。
そして、そこには大きな吹き抜けがあって、大空間になっている…。
とても魅力的なのですが、「耐震性」においては疑問に感じてしまいます。
すなわち、私の中ではどれだけオシャレでも「不正解」になってしまいます。
家づくりにおいて、まず最優先させることは、私は「耐震性=安全」であると考えます。
どれだけ、素敵でオシャレで大満足の間取りの家ができたとしても、地震で倒壊してしまっては、元も子もないと思いますので。
しかし、例外はあります。
20畳の大きなリビングに、下記写真のように大黒柱を配置して、柱の間隔を3m以内にすることができます!
上記写真は、弊社の施工写真ですが3m以内に大黒柱を古めかしく加工して、見せるオシャレな柱として配しています。
15畳ほどのLDKですが、2階の壁や柱の位置を考慮すると、これだけの数の柱が必要になってきます!
間取りを考えると言っても、苦労するのが何となくお分かり頂けましたか(笑)?
「耐震性」の高い間取り③
「直下率」という言葉を聞いたことがありますか?
直下率とは、1階の柱と2階の柱の位置を揃える率という意味です。
1、2階の柱を揃えると上から下にスムーズに力を伝えることができるので「耐震性」の高い建物ができます。
簡単に考えるには、1階と2階の壁の位置を揃えると、必然的に直下率が良くなります。
壁の中に柱がありますので、必然的に直下率は上がります。
直下率100%の間取りは難しいですが、可能な限り上下階の壁の位置を揃えて直下率を上げていきたいですね。
ちなみに、数値で示すと、柱の直下率:50~60%以上が望ましいとされています。
耐力壁の直下率は、50%~60%以上が望ましいとされています。
このパーセンテージ以上の数値を取得できるよう、間取りを考えていく必要がありますね。
さて、耐力壁という、新しい単語がでてきましたね(笑)
建築の話は、いろいろなことが全て繋がっているので、1つのブログでは書き切れないのが現状です。
今回ブログは、間取りがテーマなので…次回以降のブログで書かせて頂きたいと思います。
耐震性の高い間取り④
④の話は、間取りよりも外観に近い話になってきます。
2階建ての建物でしたら、可能な限りシンプルな総2階建ての形状が望ましいです!
コの字やL型の形状や、2階が迫り出した建物がありますが…
鉛直荷重や水平荷重に対して、大きな負担が掛かる箇所が出てきます。
間取りと外観デザインは、切っても切り離せないもの。
耐震性を考慮するのであれば、シンプルな形が望ましいです!
なぜ、①~④を考慮するのか?
ここには地域差があるのかもしれません。
エコ―アートは、静岡県浜松市にあります。
静岡県は、日本で地震保険が一番高いエリアとして有名なのです。
30年以上も前から、大地震がいつ来てもおかしくないと言われ続けられているエリアになります。
そして、阪神淡路大震災、中越地震、東日本大震災、熊本地震と大きな地震を、ずっと横目で見てきました。
その経験が、私に「耐震性」を重視させている大きな要因です。
間取りを考える上で、①~④を前提として…。
私は、耐震性を担保した上で、お客様のご要望を聞き、間取りを考えます。
①~④を前提として考えるため、なかなか間取りが定まらず、悩ましい日々を送ることがあります(笑)
1階が出来ても、2階との壁の位置が合わず、また1階の間取りを考え直してみたり…
そうすると外観デザインが崩れてしまったり…
間取りを考え始めると、1日で出来ることはほぼありません。
実は、間取りを考えるのは簡単という説が…
時々、お客様や友人から「間取りを考えるのって、そんなに難しいことじゃなくて、案外簡単なんだよね?」
と聞かれることがあります!
ぶっちゃけ言うと、上記の①~④を考慮しなければ、ある程度の時間で間取りは完成します。
逆に言うと、①~④を考慮するため、間取りがまとまらないということです。
注意事項としてお伝えしておきますが…
間取りを考える際は、①~④の内容+外観デザイン+窓の位置と大きさ+ご要望+敷地から読み取れる暮らしを一度に考えなければなりません(>_<)
なかなか、ハードなんですよ!
まず、間取りを考える時、何から考えるか?
これは、設計者それぞれですし、建てている家のテイストによっても異なってくると思います!
私の場合ですと、外観デザインと駐車計画、玄関の位置を考えます。
特に、駐車計画は毎日のこと!
車の出し入れは、1日に何回か行いますよね。
そこにストレスを感じさせてしまうのは、私としてはNGです。
まだ、話が間取りまでいっていませんでしたね!
次に、駐車場~玄関までの動線を考えつつ、玄関の位置を決定します。
ここで、要注意なのが家相!
家相を詳しく話すと、ブログどころではなくなるので割愛しますが…
弊社では、玄関の位置は鬼門を避けるようにしています。
玄関の位置を決めた後、大きなポイントが3つあります!
ポイント① リビング階段 or ホールに階段?
それぞれ、メリットとデメリットがあります。
下記にまとめてみましょう!
リビング階段のメリット→お子様が大きくなっても必ず、自分の部屋に行くときに顔を合わせる。
リビング階段のデメリット→お子様がお友達を連れてきた時に、リビングを通らなければ部屋に行けないこと。
ホール階段のメリット、デメリットはこの真逆です。
ちなみに、リビング階段のデメリットとして冷暖房の光熱費が掛かりそうと話を頂くこともありますが…
高気密・高断熱の家では、大きな金額差にはなりません。
このリビング階段、もしくはホール階段で大きく間取りが変わってきます!
階段の位置が変われば、2階の間取りは全く異なったものになりますよ。
ポイント② 1階に洋室 or 和室は必要か?
これによって、家の大きさが変わってきます。
必要な場合、家の大きさは約32坪前後くらいになることが多いですよ。
ちなみに、4.5畳のお部屋の場合です。
6畳のお部屋になると、間崩れ等がおきないように、構造上注意しなければならないので…
単純に1.5畳追加したくらいの大きさにならないケースもございます。
ポイント③ 洗面台は、洗面室の中 or 外に出す?
以前は、洗面台は洗面室の中に入れるのが一般的でしたが…
ここ数年、洗面台をホールなどの外に出すという間取りが多く見られるようになりました。
外に出すとなると、スペースも必要になってくるため、収納スペースが潰れてしまうこともあります。
しかし、年頃のお子様がお風呂に入っている時に、洗面室に入れない…なんてことがなくなるのは安心ですよね!
また、ホールに洗面台を設ければ、帰宅時に手洗いうがいもできますし。
コロナウィルスが流行している現代でしたら、このパターンも人気なのは頷けますね。
いよいよ具体的に考えていきます!
上記ポイント①~③を考慮して、間取りを考えていきます。
ここで、また前提が出てきます!
南側→リビング、ダイニング 北側→お風呂、洗面、トイレ等
そして、窓の位置と外観デザイン、構造のことを絡めながら、間取りを考えていきます(^0^)
階段の位置や2階の間取りも少し考えながら、1階をメインで進めていきます。
1階が出来たら、2階へ!
2階は、主寝室と子供部屋×2、ウォークインクローゼット、トイレという間取りのケースが多いです!
2階を考え始めると、1階と壁の位置が揃わないことが多いため…
ある程度2階を考えつつ、1階へ戻ります。
ここからは、アイディアと調整力です(笑)
そして、これを繰り返します。
繰り返しながら、徐々に煮詰めて行きます。
すると、構造的に具合が良くないところが出てきます。
柱や壁の位置が上下階で揃っていなかったり、2階の力が掛かるところに1階の柱がなかったり…
この辺りで、とても悩みます。
構造の知識がない方は、壁や柱の位置が揃っていなくても形になれば、OKと思いそのまま進めていきます。
ここで悩むか、知識があるかで、家の耐震性能が変わってきます!
とても重要なところになります。
そして、ここで悩みながらもベストの答えを出し、ご提案をさせて頂いております。
間取りが完成したら、必ず構造計算を行いましょう!
まず、住宅には構造計算をする義務はありません。
よって、構造計算をしなくても間取りさえ出来てしまえば、それのみで確認申請が下り、家を建築することができてしまいます!
弊社では、全棟構造計算を行っていますが、やっていない会社が日本中でも数多くあると言われています。
構造計算を行っていない方曰く、「今までの経験と勘があるから大丈夫」と、必ず言うそうです。
経験と勘が間違えていたとしたら、いかがでしょうか?
と言いますか…間取りを考慮するに当たり、経験と勘が一番危険です。
構造計算は、時間と費用が掛かりますが、必ずやって頂くことをお奨めします。
構造計算は、必ず「許容応力度計算にて」
構造計算には、3つの種類があります。
仕様規定、壁量計算、許容応力度計算…この3つです。
この3つの中で、最も厳しい計算方法が許容応力度計算です。
柱や梁材の1本1本まで掛かる応力を計算します。
もちろん、材木の種類によっても強度が異なるため、正確な数値を計算します。
耐震等級3の落とし穴
耐震等級とは、1~3に分かれます。
耐震等級3が一番強く、耐震等級1が最も弱いという括りです。
耐震等級3を取得するにあたり、上記3つの計算方法がありますが…
皆様は、どの計算方法で耐震等級3を取得するのが望ましいと思いますか?
最も厳しい、許容応力度計算において、耐震等級3を取得するのが望ましいのですが…
実は、仕様規定や壁量計算で耐震等級3を取得できれば、同じ耐震等級3として認定されてしまします。
ちょっとした問題ですよね!
まとめ
話が、間取りの考え方→耐震等に話がずれてしまいましたが…
間取りの考え方は、なんとなくご理解頂けましたか?
間取りは簡単に考えられるものではなく、いろいろな事柄を一度に考えなければなりません。
ですから、時間が掛かるし、お客様の命を預かることになるので、とても大きな責任もあります。
安易に間取りを提出するのは簡単なことです。
しかし、エコーアートでは安易に間取りを出すことは絶対にございません。
この間取りの考え方については、今後家づくりをされる方の参考になればと思います。